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ベートーヴェンってこんなに楽しい

最近、ピアノの先生をしている同級生から「ベートーヴェンってどう教えたら良いのか」と聞かれました。
なかなか漠然とはしていますが、こういう質問にきっちり答えられてこその演奏する立場でもあるのかなと思ったので、そういえば普段自分がどんなことに気をつけているのか、改めて意識してみました。(普段はたぶん自然にやっていることが多くて)楽譜なんて見るだけで目がチカチカする、と言う方のために、ちょっとやる気になるウキウキアイコンで飾ってみました。笑
(↓クリックで拡大します)

写真 2

ほんの見開きで、演奏する時は1分そこそこで過ぎていくところですが、この中にヒントがぎゅぎゅっと詰まってます。曲は目の前にあったヴァイオリンソナタ。ソロとは違うとこもあるかもしれませんが、同じベートーヴェン、気をつけるとこは基本同じだと思います。

まず一個目のチョコレートケーキのところ、ffがあります。大きな音、と言う意味ですけど、これが固くなってはいけないので本番でも十分脱力できるようにさらっておく必要があります。また、直前の小節がfとsfの和音で一旦終わった雰囲気になっています。なのでここの小節でがらっと音の質を変えます。続く十六分音符(♬)は左右がコンマ秒レベルのズレも無いように揃えないとだらしない印象になります。(これが結構難しい) そしてヴァイオリンがいなくてピアノのみなので、堂々とこのフレーズを弾き切ってやります。笑

次のクロワッサンは前の十六分音符からつい流れ込みたくなりますが、スラーが♩の前で切れています。♬と♩の間で一瞬切ってきちんと離して、さらにスタッカートでdecresc.とあるので一音ごとに音量を落とします。

緑のケーキのところは前の♩と音色を変えて、上にヴァイオリンが入ってくるのでスッと一歩引いて遠慮します。笑 音色に気を取られていると流れを忘れがちになりますが、同じフレーズで5小節先まで2段階で上がっているのを意識します。高いファ、がありますがここにcresc.(だんだん大きく)とあるので実際は次の小節のfのついたドがピークなので、そこまで集中が切れないようにします。

風船のところではスタッカートが()書きになっているので、これは前後をどう作るかで、どう対応するか工夫が必要です。

その下のフルーツタルトは左の単純な♩ですが、2段階になっていて、一回目は()書きのスタッカート、2回目は普通の♩なのでこれも見落としてはいけません。あと♩の長さはそろえます。

その次のカップケーキのfとffの小節は一拍目の♩と次の♬が2拍目に入ってからスラー(弧)が切れているので、きちんと切る必要があります。(前の小節も) さらに下降の音型ですが、4小節にわたって下降しているので、スポンジケーキのところまで気持ちだけは下がらないよう維持すると暗くならないと思います。(こういうつい下がってしまいそうなところには上向きの↑を書き込んだりします 笑)

スラーの注意は次のsfのついているショートケーキのところもおなじく。

次のスポンジケーキのところは和音を左右バランス良くそろえると気持ちがいい。ヴァイオリンと一緒に上昇して、fpのところはほぼsf+subitP(瞬時にPに落とす)にすると、ベートーヴェン節がでてきます。笑 
あといろんな演奏を聞いてみると、ここの和音の連打で若干テンポが速くなっている演奏がけっこうあります。たぶん速くなりやすい動きなんでしょうね。それを良いな、と思えばそのようにすればいいし(ただし自覚の上で)、かっちりTempo通りがいいな、と思うならそのように頭の隅で意識しておく必要があると思います。

ろうそくのところはおなじ動きが3段階あり、特に何も書いていませんが音の高さが下降しているので若干dim.(少しずつ音量落とす)になると思います。



・・と、ざっと書きましたが、弾き込んでいけばもっと細かい注意点が出てくると思います。これはヴァイオリンソナタなので、頭の中でヴァイオリンパートを流しながらさらうことになります。そして今はここを出すべき、引っ込むべき、ヴァイオリンに受け渡すところ、もらうところなどなど、チェックしていきます。
さらにこうしたデュオのものは、こちらのテンポがぶれると相手が困るので、メトロノームを鳴らしながら、まずは基本的なテンポ感を身体に入れます。(これはソロでもやりますが。。)
上に書き出したことは、まず最低限演奏するための必要事項なので、弾き込んできたら今度は全体を通しての音楽づくりを考えます。同時に本番で弾くホールの広さや構造をイメージしながら、音がどのように響くか想像しながらさらっていきます。
専門的にやってる方からすれば、ぜんぶ当たり前のことやん、って思われるかもしれませんが(笑)これらを実現できるテクニックも必要ですので、その下地づくり(基礎練)から考えると気が遠くなるような作業だな、と改めて思います。

ベートーヴェンは実は長年苦手でしたが楽譜を細かく見て、忠実に従うことで自然とベートーヴェンらしくなる、と言うのに気づいてから楽譜を読み込むのが楽しくなってきました ^^ 個人的にはペダルは最小限にする方が小気味良いです。
「春」はきれいだし、よく知られている曲なのでつい雰囲気で弾きたくなりますが(以前の私。。)それをやってしまったら負けな気がします。笑

以前ビックリしたことに、普段クラシック音楽を聞きつけない方から「いつでもさっと弾けるんだと思ってた」と言われたことがあり、いやいや少なくとも私は無理!と一般的なイメージと現実のギャップを感じたことがあります ^^;
活字にして、こういった過程を見ていただくと地味〜な練習の積み重ねで成り立つものであることが少しはご理解いただけるかな。。笑

ここではほんの2ページ弱の紹介でしたが、この1楽章だけで10分。日々の練習ではこういった細かい指示を全ページに渡っていかに大事に拾うか、自分が「これくらいならいっかな」と甘くならないか、そしてそれらを再現するためのテクニックを磨くこと、で潰れます。本当に、細心の注意を払って、五感を働かせてさらっていると30分もするとくらくらしてきます。地道で、人によっては頭が痛くなるかもしれませんが、こういうコツコツ練習をすることで、本番でも日頃の状態に近い的確な演奏ができるんじゃないかな〜と思います。

クレーメルとアルゲリッチの演奏で。(チョコレートケーキのところは3分47秒からです)

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グリッサンド

グリッサンドまたはグリッサンド奏法
一音一音を区切ることなく、隙間なく滑らせるように流れるように音高を上げ下げする演奏技法をいう。演奏音を指しグリッサンドという場合もあり、演奏音は滑奏音とも呼ばれる。
–wikibediaより


というわけで今日はグリッサンドの弾き方?について喋ってみます。
ただいまコンサートの準備で水の戯れをさらっているのですが、一カ所グリッサンドが出てきます。

写真11

もともとグリッサンドという奏法は学生の頃によくやる古典などには少ないし、人が弾いてるのを見ると痛そうで、何となく荒っぽいイメージだしで、出てきそうな曲をわりと避けてきました。笑 が、音楽歴が長くなるとさすがに遭遇することも多くなり、最初はやだなぁと思いつつも(笑)気づけば何となくこなすようになってました。
私ジャズを聞くのが好きなんですけど、先日ジャズフェス行ってきました。ピアノデュオの素晴らしいステージ。ときどき、手元が正面スクリーンに映し出され、あれ、グリッサンドの弾き方が違う、と思いました。(と言っても興奮状態でよく覚えてない 笑) 
それで改めて「他の人ってどうやってグリッサンド弾いてるの?」と思っていろいろ検索してみると、どうやら爪や第一関節側面?辺りで弾く方が多いらしいということ、流血する、痛い、剥がれる(なにが!?)などなどイテテテと呻きたくなるような単語がヒットしました ^^;
そういえばお友達ピアニストさんも、グリッサンドの続くとある曲のとある場所にもみじおろし、という痛そうな名前を命名し、練習はできるだけ控えて本番一発入魂で乗り切る!と言ってました。笑 とにかくピアノ弾きさまに取ってグリッサンドは恐怖の奏法らしい。
ということで、あまりグリッサンドが怖いと感じたことがなかった自分が、どうやって弾いているのかと見返してみると(今さら気づくな)写真のように弾いてました。↓

水の戯れの下降グリッサンドのかたち。

写真 3

2,3,4番の手のひらの第一関節辺りです。
力も入らないし音量も速度も調節可能ですし、なにより、痛くないよ!
何人かの方の前で弾いて、うんうん、という反応を頂いたことがあるので(←レッスン受けてる人にしか分からない感覚 笑)、恐らくこの箇所はピアノ弾きにとってどうやって弾くか注目の箇所であり(直前に和音のトレモロもあるし)、それが、たぶん聞いてる側にも変じゃなかったのだと思います。

白鍵はこの方が弾きやすいのかな? 

写真 6

私の数すくないグリッサンド歴(笑)の中では今のところ通用しています。
ただ、去年頃ベートーヴェンのヴァルトシュタインさらってた時、三楽章に登場するこの部分↓に遭遇し、あこりゃムリだわとあっさり諦めました。(時間がなかったのもあり ^^;)

スクリーンショット(2014-10-10 22.27.43)

ここをクリアする妙案を思いついたらまた書いてみます。笑
まだまだこんなかんたんな方法あるよ〜っていう方法がありましたら、ぜひ教えてくださいませ〜